治安指標の計算方法
AreaTherm の「治安」レイヤーが何を表し、どう計算しているか、どこに限界があるかをまとめます。
このサイトの立場
各指標は公的機関のオープンデータをそのまま集計・可視化したものです。外国人住民比率と犯罪指標は別々のレイヤーとして表示するだけで、両者を掛け合わせた指標や、両者の関係を示す分析は提供していません。地域の特性を多面的に確認するための参考情報としてご利用ください。
使用データ
- 各都道府県警察「犯罪オープンデータ」(2025年の認知件数): 街頭犯罪7手口(ひったくり・車上ねらい・部品ねらい・自動販売機ねらい・自動車盗・オートバイ盗・自転車盗)。発生した市区町村が記録されています。
- 警視庁「区市町村の町丁別、罪種別及び手口別認知件数」(2025年): 東京都のみ。凶悪犯・粗暴犯・侵入窃盗・非侵入窃盗・その他のすべての刑法犯。町丁別の件数を区市町村ごとに合計しています。
- 各道府県警察の市区町村別・罪種別の認知件数(2025年確定値): 秋田県・千葉県・福井県・岐阜県・静岡県・滋賀県・京都府・大阪府・岡山県・山口県(凶悪犯・粗暴犯・窃盗犯・うち侵入窃盗)、北海道・岩手県・宮城県・栃木県・神奈川県・三重県・福岡県・佐賀県・長崎県(凶悪犯・粗暴犯・窃盗犯)、新潟県・奈良県・広島県(刑法犯総数・侵入窃盗。広島県は12月末の暫定値)、石川県・島根県(刑法犯総数・窃盗犯・侵入窃盗。凶悪犯と粗暴犯などをまとめて計上しているため)、鳥取県(刑法犯総数・窃盗犯)、青森県・山形県・福島県・茨城県・埼玉県・富山県・山梨県・長野県・兵庫県・熊本県・宮崎県・鹿児島県(刑法犯総数のみ)。市と区のみ(郡・町村は対象外)。PDF から読み取った県は、各行で「総数 = 罪種の合計」、または「全市区町村の合計 = 県全体の総数」となることを確認してから採用しています。
- 人口(率の分母): 総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」(市区町村別)。
対象範囲: 街頭犯罪は全47都道府県。都道府県警察によって公表している罪種の区分が異なるため、凶悪・粗暴犯の率はこの区分を公表している都道府県で、刑法犯総数の率はそれ以外の都道府県も含めて表示しています。
刑法犯総数・凶悪・粗暴犯などを表示できない都道府県(2026年9月時点)。これらの地域では街頭犯罪の率のみ表示し、ほかの治安レイヤーは「データなし」になります。公表されしだい追加します。
- 群馬県・愛知県: 県警の公表が警察署別(愛知県は小学校区別も)で、市区町村別の罪種別統計が公開されていない
- 和歌山県: 市町村別の統計が2024年分までしか公開されていない
- 徳島県: 市町村別の表が画像でのみ公開されており、正確に読み取って検算できない
- 香川県・愛媛県・高知県・大分県・沖縄県: 市町村別の刑法犯統計が公開されていない(大分県はグラフのみ)
- 上記以外の道府県の郡・町村: 市区町村別の統計を手作業で集めて検算しているため、対象を市と区に絞っています(郡・町村は街頭犯罪のみ)。
罪種のカテゴリ
- 凶悪・粗暴犯(身体的危険度): 殺人・強盗・放火・不同意性交等(凶悪犯)と、暴行・傷害・脅迫・恐喝など(粗暴犯)
- 侵入窃盗(住宅リスク): 空き巣・忍込み・居空き・事務所荒らしなど
- 非侵入窃盗(生活影響): 自転車盗・車上ねらい・万引き・置引きなど
- 街頭犯罪(全国): 非侵入窃盗のうち、犯罪オープンデータの対象となっている7手口
率の計算: 経験ベイズ推定
件数をそのまま比べると人口の多い地域ほど大きくなるため、人口1,000人あたりの年間件数で比べます。ただし人口の少ない地域では、件数が1件違うだけで率が大きく振れます(例: 住民3人で2件なら1,000人あたり667件)。
そこで、疾病地図などで標準的に使われる経験ベイズ推定(Poisson–Gamma モデル、Marshall 1991 のモーメント推定)で率を平滑化しています。各地域の率を、同じ参照地域全体の率に向けて「人口が少ないほど強く」近づけます。近づける強さは、参照地域内で率が実際にどれだけばらついているかからデータ自身で決まり、恣意的な調整は入りません。参照地域は都道府県です。
r_i = y_i / n_i (y: 件数, n: 人口) m = Σy / Σn (参照地域全体の率) s² = Σ n_i (r_i − m)² / Σ n_i A = max(0, s² − m / n̄) (n̄: 平均人口) w_i = A / (A + m / n_i) 推定率 θ_i = m + w_i (r_i − m) × 1,000
参考文献: Clayton, D. & Kaldor, J. (1987) Empirical Bayes estimates of age-standardized relative risks for use in disease mapping. Biometrics 43(3), 671–681. / Marshall, R. J. (1991) Mapping disease and mortality rates using empirical Bayes estimators. Journal of the Royal Statistical Society: Series C 40(2), 283–294.
合成スコアを作らない理由
罪種ごとに重みを付けて1つの「治安スコア」にまとめる方法もありますが、本サイトでは採用していません。重み(例: 凶悪犯を粗暴犯の何倍とみなすか)には客観的な根拠がなく、作り手の価値判断が入るためです。また、公表されている罪種の区分が都道府県によって異なり、同じ定義のスコアを全国でそろえることができません。
そのため、街頭犯罪・凶悪・粗暴犯・侵入窃盗・刑法犯総数を、それぞれ公的な件数と人口だけから計算した個別の指標として示しています。
表示の単位(市区郡)
人口・外国人住民比率・年齢構成・犯罪の指標は、全国を市・区(政令市の区と東京23区)・郡の単位で表示しています。郡に属する町村は、人数や件数を郡ごとに合計してから比率や率を計算しています(郡の構成町村はツールチップに表示)。郡に属さない東京都島しょ部の町村は、そのままの単位で表示しています。
刑法犯総数・凶悪・粗暴犯などの罪種別の統計は、道府県警察の資料が主に市と区のみのため、郡はすべての町村のデータがそろう場合(東京都)だけ表示しています。
郡は現在は行政の単位ではないため、性格の異なる町村がひとつにまとまる場合があります。同じ区の中の駅前と住宅地のような、市区郡より細かい差は表しません。
データの限界
- 認知件数は警察が把握した件数であり、実際の発生件数とは異なります。届出のされやすさは罪種や地域によって違います。
- 分母は住民数のため、来訪者の多い繁華街・オフィス街・駅周辺は高めに出ます。経験ベイズ推定は件数の少なさによる揺らぎを抑える手法で、この性質は解消されません。
- 犯罪件数は2025年の1年間、人口はその後の最新の住民基本台帳(2026年時点)で、時点が少しずれています。
- 都道府県によって公開されている項目や集計方法に差がある場合があります。